治せる認知症、手術が必要なもの見逃すな!
アルツハイマー病と診断された認知症の中に実は「手術で治せる認知症」が潜んでいる可能性が指摘されています。それは有病率でパーキンソン病より多いと言われている特発性正常圧水頭症(iNPH)です。65歳以上の高齢者の1.6%、約56万人の疑い患者がいると言われています。
血管障害がその発生に関与していると言われていますが,その原因はまだ解明されていません。その特徴は,3つあります。まずは歩行障害で,歩幅の減少,足の挙上低下,開脚歩行,方向転換時にすくみ足となり,不安定になります。
次に認知機能面で前頭葉機能に関連する自発性の低下,語想起機能(例えば,1分間で動物名を挙げてくださいとなどの語列挙検査)低下などがみられます。3つ目は,排尿障害で,尿意切迫,尿失禁が主な症状です。ただしこの3つが揃うのは50〜60%です。最も多い歩行障害でも,単独でみられるのは12%のみです。
脳脊髄液が脳室やシルビウス裂より下のくも膜下腔に貯留し,それより高位のくも膜下腔で減少します。このようなくも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症(DESH)と呼びます。診断に不可欠な画像検査では,脳室の拡大,Evans index(両側脳室前角間最大幅/その部位における頭蓋内腔幅)が0.3以上となります。また高位円蓋部のくも膜下腔の狭小化の結果,脳梁角が90度以下と急峻な傾向があります。海馬が萎縮して見えることもあり,アルツハイマー病との鑑別が必要です。
治療の主体は手術で,髄液シャント術で貯留している脳脊髄液を腹腔などに流し,静脈に吸収させるのです。なんらかの改善が得られるのは,50〜90%と言われています。
診断後早期のシャント施行群は,3か月以上待機後の手術群より,症状の改善度がいいと言わています。最後に画像的に特発性正常圧水頭症の特徴を示しても、臨床症状が欠けるものをAVIM(asymtomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI)と言い,この病気の前段階とも考えられています。
平成30年5月7日