インフルエンザが流行しています。外来に来られる患者さんたちの中で、病院を受診したら熱出て間もないから後で来るように言われた。熱出てすぐだと検査しても出ないから、半日待って来ましたという方が結構います。他の病気でわざわざ患者さんが病院へ来るタイミングを診断のために遅らせる病気が果たしてあるでしょうか。検査ありきの前代未聞の事態です。
それでは迅速診断キット以外でどのように診断されるのでしょうか。
臨床症状ですが、陽性尤度比(インフルエンザの人でそうでない人より何倍認めるか)、診断的オッズ比(1より大きくなるほど診断的価値がある)を認めるのは、急性発症で、それが発熱と咳の場合です。インフルエンザ流行期にまずはこの症状があれば、疑ってかかります。
ただし、普通感冒のように咽頭痛や鼻汁が発熱より先行することも多く、臨床症状だけで診断は不可能です。そして次にポイントになるのが、感染者との接触です。家族に感染者がいれば半数近くが罹患する可能性があります。
そして診察のポイントは、 咽頭後壁に見られるインフルエンザ濾胞と呼ばれているリンパ濾胞を見逃さないことです。アデノウイルスなどの他のウイルス疾患でも認められますが、流行期に来られた急性発症の間もない患者さんが目の前にいる状況では、この特徴的な所見をみたら、検査をしなくても診断に至ります。
ただしこのインフルエンザ濾胞は発症後、時間とともに平坦化、かつ色調も周囲との差がなくなってしまいます。そこで迅速診断キットの出番です。中には微熱程度で、じわじわと発症、咽頭後壁にも異常なく、検査で陽性となる方もいるのです。
そして普通感冒などのウイルス感染で認められる後頚部のリンパ節腫脹は、診察の時には認められず、むしろ熱が下がったころに腫れてくるのです。まさしく発熱が先行するインフルエンザウイルスならでは臨床経過と言えます。
2019年1月31日