新型コロナウイルス肺炎,冷静かつ厳粛に対応を

連日報道されている新型コロナウイル肺炎,確かにクルーズ船や武漢からの帰国者の健康を願うことは第一です。ただ繰り返しセンセーショナルな声でテレビ放映されることで,国民の不安を煽り,マスク不足と言った社会情勢を誘発しているのは報道機関であることも彼らは自覚すべきです。
大切なことは、国民は正しく情報を把握し冷静に対応し、行政や医療機関などは厳粛に対応策を講じていくことです。行うべき対策のレベルは国民と行政では根本的に違うのです。水際作戦で入国制限をしているからと言って,流行地域からの帰国者への偏見や人種的な差別な行動は思慮の浅い軽率な行動としか言えません。
まず新型コロナウイルス肺炎の病原性を考えてみましょう。ここ最近の新興感染症における感染者数とその致死率の比較です。感染者数はSARSを上回りましたが,現時点での致死率は2%とこれらの中では低い値です。

そしてこの集計のほとんどが中国本土での患者数が反映されており,また感染してもかなり症状が軽い人や無症状の人がいることも判ってきており,この致死率は今後さらに下がる可能性もあります。2009年新型インフルエンザが世界的に流行したときにも,メキシコからの当初の情報ではまさしく今の新型コロナウイルス肺炎と同じ2%という数字でした。その後、WHOの緊急チームから致死率0.4%という数字が出されました。最終的に日本では2009年7月末から2010年3月末までの集計で、人口10万人当たりの死亡率は0.16と世界で最も少ない値に抑えることができたのです。
現在行うべきことはマスクを買いあさることではなく,今からは冷静に不要なことで人混みや密閉した空間での人の集まりなどに外出する機会を見直すことです。マスクをして大勢の人込みの中で,娯楽に興じることは控えるべき行為でしょう。企業は今後の国内流行に備えて,BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)を立てて,流行地域への出張や時差出勤や在宅勤務などの手段を粛々と講じていくべきです。

ランセットの論文における武漢の病院での新型コロナウイルス肺炎患者の集計では,発熱が83%,咳は82%と最も多い症状です。

ただし国立国際医療研究センターに入院した3例とも37〜38℃程度の熱発と感冒症状です。臨床症状からのみでは普通の風邪との鑑別は困難です。昔から‘かぜ’を引かないために,睡眠・運動・栄養,そして疲れ,ストレスを溜めない,手洗いやうがいの励行が言われています。基本に立ち返りましょう。外出から戻ったら,まずは手洗いとうがいをしましょう。

致死率の数字だけに捉われて,それでは国がやっている水際作戦など意味がないではと思う人がいるかもしれませんが,それは大きな勘違いです。この新型コロナウイルス肺炎という新興感染症には,治療薬やワクチンは現時点ではなく,医療体制も確立された経験がありません。そこで行政が行う水際作戦,医療機関で行う感染者のトリアージ(感染者の重症度や感染の有無で,診療導線を分けたり,治療の優先度を決めること)は重要な意味を持ちます。感染の拡散を少しでも遅らせることが,公衆衛生学的に大きな意味を持ちます。

流行のピークまでの時間をかせぐことで,医学的に判明してくる事実,治療法やワクチンなどが開発されることで,最終的に感染者数を減らし,死亡者数をも抑えることにつながるのです。そして流行の定着から起こるさらなるウイルス変異を防ぐことにつながっていくのです。厳粛に専門機関は対策を講じていく必要があります。

そしてSARSや今回の新型コロナウイル肺炎(2019-vCoV)は,動物由来感染症と言われるものです。厚生労働省のホームページにこの動物由来感染症について詳しく紹介されています。
(参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html
今までに200種類以上あると言われている動物由来感染症は,既に私たちの身近に存在します。国内ではペットの増加や多様化による感染の危険性の増加、そして世界的には未開な土地への人間社会の進出などによって,人間にとって未知な病原体との接点が増えています。そしてグローバル化した世界では,短時間に多くの人や物資が行き来する結果,未知なる病原体が時間単位で国内にも入ってくるということです。我々が気をつけることは,野生動物を飼ったり,むやみに触れることは控えることや,動物を触れた後にはしっかりと手を洗うことなどです。
最後に「South China Morning Post」
(参照:https://multimedia.scmp.com/infographics/news/china/article/3047038/wuhan-virus/index.html)に掲載されていた1枚の写真を紹介します(コメント文章は筆者訳)。

先ほどの動物由来感染症の注意点から見ると,危険性が潜んでいることが判ります。今後,中国が世界のリーダーシップを発揮する国家として,さらなる成長をとげるために,人民の日常生活における衛生状態の改善を早急に進めていくことを切に願います。

令和2年2月10日

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