コロナウイルスとは,新型肺炎に備えて行うべき対策(医療関係者必読)

中国・武漢から拡散した新型コロナウイル肺炎が世界に拡散し始めています。コロナウイルスは,そもそもは毎年流行するあまり発熱もなく,いわゆる鼻かぜを引き起こすウイルスです。

しかし,過去に動物から感染して重症肺炎を引き起こしたSARSや今なお中東を中心に終息していないMERSなどがあります。風邪の原因となるコロナウイルスは鼻咽頭に親和性が限定されているのですが, SARSやMERSの場合は,ウイルスの受容体や親和性が肺胞上皮や小腸,腎臓,血管などのあらゆるところに広がることで,肺炎や消化器症状などを引き起こします。

今回の新型肺炎を起こしているウイルスの性質や感染力の詳細はまだ判っていません。現在のところ肺炎を起こし,濃厚接触による人から人への感染が示唆されています。

今後,人の体内でのウイルス変異や一人で多くの人に感染させるスパースプレッダーの出現の有無がこの感染症の脅威度を左右することになります。
現時点では,MERSよりも感染力が強かったSARSを想定した準備をしておくべきです。
SARSが流行した2002年から2003年に医療従事者の感染が全体の21%に及びました。

254名の医療者の感染防御法分析でサージカルマスクが有効なことが判ります。すなわち飛沫感染対策が基本になります。   

ただし毎年流行するインフルエンザと違って,人の体内組織との親和性が腸管や血管などにもあることは,接触感染予防策である手洗い,手袋などの防護法も重要になることを忘れてはいけません。ウイルス粒子の外側にエンベロープという脂質2重膜があり、アルコールなどの消毒剤が有効です。手指の消毒法としては,70〜80%の消毒用アルコールを用います。また熱にも弱いので,80℃以上の熱湯に10分以上浸すことで失活します。また環境消毒としては,界面活性剤をぬるま湯に溶かしたもの(台所用合成洗剤として濃度0.5%以上)に浸した雑巾で2度拭きすると良いでしょう。

SARS流行のときの絶対忘れてはけない教訓があります。

世界に流行したSARSでは医療関係者における2次、3次感染が問題となりました。CDC(米国疾患予防管理センター)の集計報告において,全体の感染者に占める医療従事者の割合に国による差が認められました。
その原因が分析されて以下のように報告されています。

香港の場合は,中国から始まり,十分な分析や情報が伝わっていなかったこと,そしてハード面での問題があったことが判ります。むしろ問題はカナダでの分析結果です。
マスク,ガウンなどの着脱の事前のトレーニングがされていなかったことです。ガウンを脱ぐときに衣類や手指に付着しないように脱ぐための手順の習得が必要です。また重篤な肺炎患者に対しては気管挿管などの行為が必要で,その場合には空気感染対策が求められます。医療者はマスクも従来のサージカルマスクではなく,N95のマスクの着用をしなければなりません。N95マスクは購入して着ければ終わりというものでは全くありません。マスクを顔面との間に隙間をつくらないように,しっかりと装着しなければN95というマスクを使う意味がありません。
そのために装着の訓練を行い,マスクが適切に装着できているかのフィットテストを行います。

大学病院在籍中に毎年,このN95マスクフィットテストを企画して,救命病棟や呼吸器・感染症病棟に勤務する医師・看護師・検査技師・薬剤師など計830名にマスク装着訓練を行ってもらいました。結果をあらかじめ想定して,タイプの違う3種類のマスクを購入して,フィットテストを行ってきました。結果は「ノーズピース付き(筆者の仮命名)マスク」が,最も多くの人に隙間なくフィットしたのですが,それでも8割弱です。そして3種類のマスク全てを試しても,フィットしなかった医療関係者が5%いました。そのため,諦めずに毎年参加を促し,装着訓練を行ってもらいました。
感染防御として個人防護具を揃えておくことは重要ですが,それだけでは意味はなく,それらを適切に使うため,あらかじめの訓練が不可欠であることが,SARS流行のときに医療関係者に投げかけられた教訓です。

令和2年1月23日

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