秋雨時期も多いカンピロバクター腸炎
今年の梅雨から夏にかけてカンピロバクター腸炎の患者さんが数名見つかりました。例年、梅雨の時期と秋雨の時期に発症する人が多くなる傾向があります。昨年の食中毒の原因病原体として、ノロウイルスに匹敵する件数の報告があります。
ただし、この細菌は感染してから発病までの潜伏期が長く、中には10日前に生の鶏肉を食べたという人もいて、簡単には原因として浮上しにくいのです。そのため、実際はもっと多い件数とも言われています。当院では下痢症状のひどい人では積極的に便の培養検査を行っており、今年はO157やO26などの大腸菌による腸炎を発症している方もおられました。
菌を摂取しても症状のない人から、1日10回以上の下痢と高熱、中には虫垂炎と紛らわしい腹痛を訴える人もいます。軽症の場合は特に対症療法のみで軽快しますが、重症の場合には抗菌薬を使います。クラビットなどのキノロン系抗菌薬は既に耐性化していたり、早期に耐性を獲得するため適さず、アジスロマイシンなどのマクロライド系を使います。稀に腸炎発症1か月以内に手足のしびれや筋力低下などから気がつくギラン・バレー症候群という神経障害を合併することがあります。
感染しないためには、生の肉や加熱不十分な肉は食べないことが第一です。
主に鶏肉ですが、牛でも腸管から胆のう、肝内胆管も汚染されており、レバーなどを食材としたバーベキューの時にも十分な加熱と器具を介した汚染には気をつける必要があります。昨年の食中毒統計でノロウイルスと比較すると、件数はほぼ同じですが、患者数は3〜4分の1程度と少なく、それはノロウイルスほどの感染力はなく、また人から人への接触感染は一般にはないことからもうなづけます。
平成29年9月21日