CRA症候群に陥っていませんか?
CRA症候群とは腎不全、貧血、心不全が進行することでお互いに悪影響を及ぼし、悪循環を形成するという概念のことです。2003年に提唱されて、現在では専門医以外でも浸透しつつあります。
心不全が進行することで腎の血流低下、腎間質の線維化の進行、そして腎機能が悪化。腎機能低下に伴い貧血が進行し、その結果、心臓への負担が増すことになり、さらに心不全を進行させます。
また、腎機能低下により血圧上昇やカルシウム・リンの代謝障害から心臓弁の石灰化が促進されます。心機能低下により、貧血促進因子が増え、貧血になれば、その結果、腎臓の虚血、腎不全がさらに進行することになるのです。
この悪循環を断ち切ることが重要になります。このサークルに楔(くさび)を最も入れやすい治療が、貧血の治療になります。透析に至っていない慢性腎臓病患者において、貧血の治療を行うことで、腎生存率が明らかに改善しています。
また心・血管に関連する病気の発症リスクが、腎機能が正常な人と比較して、腎機能低下(eGFR<30)者では10倍以上あることも判っています。
正常の腎臓では、貧血に応じて造血因子である血中のエリスロポエチン濃度が高まります。しかし、慢性腎不全患者においては、この反応が弱く、相対的にエリスロポエチン濃度が低くなります。その結果、貧血が進行します。
したがって、この造血因子を注射で定期的に補充することによって、慢性腎不全に関連する貧血の治療が可能になります。また病態(鉄代謝の評価のうえ)によっては、鉄剤の内服を必要とすることがあります。
平成29年8月3日