性格が変わった、もの忘れないけど認知症?
なんか、最近性格や好きな食べ物が変わった。でも物忘れはなさそう。決まった時刻に必ず起きて、雨でも散歩に、戻ると毎日決まった時間に部屋の片づけ、まるで時刻表通りに行動をしている。
家でぼーっとしているとボケるからいいことね、いや!すでに認知症始まっているのです。早めに1度、受診してもらいましょう。行動異常型前頭側頭型認知症(俗にピック病)において、特徴的な行動の一つです。そしてこのタイプの認知症のやっかいなことに、初老期から見られることも多く、そして初期には記憶障害が顕著ではありません。そのため、病院を受診して長谷川式認知症検査を受けても、中にはほとんど満点を取る方もいるのです。そのために「認知症ではないね」と言われてしまうケースもあります。
その他にも特徴的な行動として、過食や食行動の変化があります。急に甘い物が好きになったり、飲酒量や喫煙が増えたり、そして無茶食いをしたり、挙句の果てに食べものでないものも噛んだりすることがあります。
さらに反社会的な行動が問題になるケースもあるのです。障害が前頭葉眼窩面付近に及ぶことで、怒りっぽくなったり、万引きをしたり、その場にそぐわない行動や対人関係でも配慮はできなくなってしまいます。
クリニックでは他院で治療に難渋されて来られる認知症の方が多いせいか、全体の1割以上にこのタイプの方が通院しています。中には「海馬の萎縮=アルツハイマー病、だからアリセプト」という単純な図式で誤診されていることがあります。このタイプにはアリセプトは合いません。高齢発症のアルツハイマー病は、初期には海馬の萎縮は目立たず、むしろ頭頂葉の萎縮が顕著です。前頭側頭型認知症では、側頭葉の萎縮に伴い、画像上海馬が強く萎縮して見えることがよくあるので注意が必要です。
平成29年1月26日