忘年会シーズン、さあ飲む前に一考
今年も終わりを迎えようとしております。まさにこれから忘年会シーズンを迎えるにあたり、「さあ、飲むぞ!」と意気込む前に飲酒による体への影響について考えてみましょう。
「 酒は百薬の長」それとも「酒は命を削る鉋(かんな)」?
1日の平均アルコール摂取量と死亡率を国外の14の疫学研究で分析したものです。摂取量と死亡率は、「J」カーブになっていることが知られています。死亡率が低いのは男性では1日アルコール量20g(ビール約500ml)以下、女性では男性の半分の量です。逆に日本酒2合以上になると相対危険率が上がってきます。残念ながら、厚生労働省の調査では半数以上の人がこの適量を知りません。
アルコールは主に肝臓で代謝されます。アルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドには、フラッシング反応(赤ら顔、頻脈など)を起こすだけでなく、発癌性のあることが知られています。また飲酒量が多くなると、ミクロゾームエタノール系酵素であるチトクロームP450という酵素の役割が大きくなり、本人の自覚としては、フラッシング反応がなく、「俺は酒に強い!」という優越感を引き起こします。
そして慢性飲酒に引き込まれ、さらにこの酵素が誘導され、働きを強める(飲んべーサイクル:筆者命名)結果に陥ります。その結果、フリーラジカルの増加、すなわち体に酸化ストレスを生じていきます。アルコール性肝障害に拍車をかけ、肝硬変にも近づいていくことになります。また飲酒は肝臓以外の臓器での発癌性や膵臓への影響、さらには脳神経細胞へも影響を及ぼします。
「お酒は冷えた体と心をほんのり温めるほどにしておきましょう。」
クリニックでは「アルコール負担度検診」を行っています。現在の体への影響度評価と適量飲酒の指導を行っていますので、是非ご利用ください。
平成27年12月1日